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姪の小論文担当に体育教師をあてがう人たち

以前はAOと称され、今は総合選抜型入試と呼ばれる自己推薦型入試。今はちょうど、合格発表がひと段落した時期でしょう。合格されたかた、おめでとうございます。
僕も何度か、AO入試に挑む生徒さんに関わりましたが、中でも、数年前に志望校に合格した生徒さんの奮闘には、今なお敬意を抱かずにおれません。
 

彼女の志望に対して、前例とノウハウを持たない高校サイドはこれに猛反対。別の大学を受験するよう激しく迫りました。志望校を受けるのであれば学校側は一切協力しないとまで宣告された彼女は、高校3年の夏、途方に暮れて塾の門を叩きました。 色々頑張りたい気持ちはあるものの、高校の教師たちに全否定されて自信を無くしていた彼女は、何をやってもうまくいかないのではないかとういう気持ちに沈んでいました。


とりあえず、志望理由書の作成から開始。用意した4パターンの志望理由書の中から本人に合うものを選んでもらったところ、「この書き出しに一目惚れしました!そのまま使いたいです」と言われたので、最初の数行ほどについてはOKした上で、以降は本人にしっかり考えさせ、それを元に10回近くの書き直しをさせました。字数制限1200字の文章を。

ちょっとずつ表現の案は出すものの、自分の言葉に育たないと意味が無いので、容赦無い添削の嵐。それを彼女は一切弱音を吐かずに乗り越えました。きっと、書き直す度により良いものに仕上がっていく実感を得られたからだと思います。完成した志望理由書は本当に素晴らしかった。今でもデータを記念に取っています。

 

同じような立場の人を集めてグループ討論の練習をした方が良いよと言うと、同窓生か否かを問わずあっという間に人を集め、しかも、志望校在籍の大学生に審査をお願いするという行動力も凄かった。

 

一次試験ではグループ討論、内申書、志望理由書の出来を審査されたのですが、グループ6人中クラッシャー(*グループ面接などで、自身がいかに他者よりも優れているかをアピールできれば合格できると勘違いしている人。本人が不合格になるのは勿論、同一グループの人もつい張り合ってしまって巻き添えを食う危険性が高まってしまいます。)が2人、何も話さない人が1人という、巻き添え落ちの可能性が非常に高い環境の中、彼女は、「どんなに変な奴がおっても、グループ全員が合格するにはどうしたら良いかを最優先で臨んでね」というこちらのアドバイスをきちんと守って行動し、2人しか合格者の出なかった「死の組」を通過しました。
 

すると、高校の教諭たちが手のひらを返す返す。でんでん太鼓かってくらい返すのです。

それは、彼女のお母様からのこんな電話で判明しました。

「高校の先生たちが功名心に駆られて各自バラバラなアドバイスをしてくるんです。娘が混乱して精神的に参っています。一次試験に合格した直後の今がどん底だなんて意味が判りません!助けてください!」

中には、一次試験通過後に件の志望理由書を読んで、「こんな内容では絶対に落ちる。見てやるから書き直しなさい!」と言ってきた教諭もいたそうです。これには温厚な彼女もかなり憤慨していました。

「これで合格したっちゅーの!」
僕は生徒さんに、信用できる先生を1人選んで、その人(まあ、当然僕なんですけど)だけと準備を重ねていくよう伝え、そこから彼女は何とか立て直し、小論文と個人面接のおこなわれる二次試験でも良い手応えを残して合格したのでした。

その後書いてくださった合格体験記は、「これは流石にサクラの文章にしか見えない」という判断が為され、異例の下方修正が入る事態に。

運の悪いことに、僕は書き直す前の文章を目に出来ませんでした。見たかったなぁ…

 

 

先日、この生徒さんが某イベントの広告に載っているのを目にして腰を抜かしたのをきっかけに、ふと書いてみたくなりました。